『ぐちゃぐちゃ』

宮沢 弘

第12回 【シナリオの重層化】

さて、以前にも考えたが、良いシナリオとはどうやって作れるものなのだ ろう? そもそも「良いシナリオとは?」という疑問もあるが、とりあえずそれ は置いておき、ここでは私が「良いシナリオ」だとおもう一例を挙げたい。そ れを考えるには、RPGに見られる葛藤(対立)の重層性を理解する必要がある。

[小林1]や[小林2]で述べているが、RPGには複数の葛藤や対立が並行して存 在している。第1には、RPGの世界観に見られる対立である。これは例えば善対 悪のような世界観を考えると分かりやすいだろう。第2にシナリオの基盤とな る葛藤や対立である。これはPC対悪人という図式で、第1の葛藤や対立を目に 見える形にしたものと言えるだろう。第3には、個々のシーンで見られる対立 である。戦闘の場合にはこの対立もはっきり見られるが、その他のシーンでも いろいろと見られるはずである。

さて、ちょっと話が変わるが、音楽について考えてみよう。音楽には様々 な楽器が使われる。大雑把に分けるだけでも、リズムセクション、ローセクショ ン、ミドルセクション、ハイセクション、そしてカウンターパートとなる。そ れらの音が組合わさり、素晴らしいハーモニーが生まれてくる。もしも音楽が ユニゾンだけで構成されていれば、それはたいして素晴らしいものとも思えな いだろう。

さて、私が言いたいことはもうお分かりだろう。シナリオにも、背景世界 から、そのシーンに至るまで、葛藤や対立という形をとって重層的な構造が必 要だということだ。一言で言ってしまうなら、世界観を行かしたシナリオを創 るのが良いという話になる。

これは、「当たり前のことだ]と思われるだろう。だが、自分自身のシナリ オを振り返ってみてほしい。本当にそういうシナリオを創っているだろうか?

おっと、第4回では『[馬場]では既存の物語か らの翻案(あるいは変換)を 勧めている。これは私も大賛成だ。中には「世界が 違えばそんなことはでき ない」と主張する人もいるが、[馬場]に例が有るとお り、十分可能である。』 と言っていたことと矛盾すると思う人もいるかも知れない。ところが残念なが らそうではない。私は何も「完全に同一のシナリオでどんな世界ででも遊べる」 などとは言っていないのだ。シナリオの基本線を残しながら、様々な世界に対 応できるということだ。それぞれの世界ごとに、その世界に見られる対立から 重層化すれば良いのだ。

ま、音楽の例で、シナリオにも重層化された葛藤や対立がある方がおもし ろそうだとは思っていただけるだろう。そう思っていただければ、そして是非 実践していただければ、この駄文も、それにかけた時間も報われようというも のだ。

というわけで、次回はもう少しこの重層化について掘り下げて書いてみよ うと思う。例題としては皆さんになじみの深いファンタジー世界を取り上げて みよう。そうそう、この記事に対するご意見などは、 skoba@hamal.freemail.ne.jp までお寄せいただきたい。返信するかどうかは 分からないが、参考にはさせていただく。

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