『ぐちゃぐちゃ』

宮沢 弘

第14回 【シナリオの重層化(3)】

さて、重層化したシナリオをどのようにプレイヤーに提示するかである。

重層化の基盤となる3つの葛藤(対立)をもう一度みてみよう。それらは、特 定のRPG の背景世界が持つ葛藤と、個々のシナリオが持つ葛藤、そして個々の シーンが持つ葛藤であった。

シナリオが持つ葛藤というのは、例えばPC対悪漢という構図を基本として、 かなり提示しやすいだろう。なにしろ、シナリオの目的はその葛藤の解消や緩 和であるはずだからだ。そしてシーンがもつ葛藤も、PC対NPCという構図でか なり明確に提示できると思われる。ただ、問題は、シナリオの持つ葛藤と遊ぼ うとしているRPGが持つ葛藤との間にどのような関係を持たせ、どのようにそ れを提示するかである。同様の問題が、シーンの葛藤とシナリオの葛藤の間に も言える。

後者の場合、例えば並行ストーリー[小林]のように、PCが関知する以外の 個所でも何かが動いていることをプレイヤーに提示することができる。これに より、それぞれのシーンでもPC達の目的が明確になるとともに、シナリオに存 在する葛藤がより明確になるだろう。

前者については、言ってしまえば設定の問題である。遊ぼうとしているRPG の背景世界が持つ葛藤を事前にプレイヤーに伝えることは、非常に重要である。 例えば善対悪の葛藤(対立)があるRPGの背景世界が持つ葛藤であるとしよう。 そうすると、シナリオの早い場面で、善対悪の対立があることをプレイヤーに 分からせる必要がある。またその葛藤(対立)の具体化したものが、シナリオに おける対立となっていることも知らせる必要がある。

この場合、一番簡単なのは、善対悪の対立から、PCとその存在自体が邪悪 なモンスターとの対立を提示することであろう。ただし、現在では、「モンス ターは邪悪な存在である」という安直な理由づけは、好まれないだろう。せめ てなぜそのモンスターは邪悪なのかという理由づけが必要になる。つまり、そ のモンスターが何をしたことによって邪悪と見なされているのかという理由付 け位は必要になるだろう。また、このような情報は、セッションの最初に与え られるだけではなく、セッション中においても何らかの形で、プレイヤーに提 示され続けることが望ましいだろう。これは、シーンとシナリオとの間に用意 される並行ストーリーに埋め込むのが良いだろう。あるいは自然と埋め込まれ るはずである。

そうすると、シナリオの主要なストーリーに加えて1つの並行ストーリをプ レイヤーに提示することにより、シナリオの重層化をプレイヤーに提示できる ことになる。

あまり参考にはならなかったかもしれないが、一度こういうことを意識し てシナリオを作ってみてはどうだろう。

というわけで、今回はここまでだ。次回は、ロールプレイについて考えて みようと思う。そうそう、この記事に対するご意見などは、 skoba@hamal.freemail.ne.jp までお寄せいただきたい。返信するかどうかは 分からないが、参考にはさせていただく。

参考資料