汎用システムについて考える

#.汎用システムって?

ここでは、汎用システムというのは、つまり少なくとも複数の世界を 統一的なルールで遊べるものだと考えます。 ただし、まったく同一のPCで、複数の世界を遊べるかどうかは問題では 無いとします。

同一のPCで遊ぶということは、 複数の世界をまったく同一の尺度で表現しなければならず、 つまりミクロマンからマクロスの母艦までを同一の尺度で 表現できなければならないわけです。 これはかなりやっかいな問題です。 TORGでもこれを何とか解決していましたけどね。 あとUltimate Powerでもそれを可能にする設定がなされています....が、 これが分かり難いというか面倒なんだわ。 Σでも多分可能になってるはずだけど。 そこまで徹底したサプリメントはいまのとこ無いんだな。

#.分類

さて、汎用システムを実現する方法ですが、 これには4つほどの実現方法が有ります。 以下ではそれぞれを紹介していきます。

#.#. Multi-Setting

1つは、そのRPGそのものを複数の世界の混じりあったような世界にしてしまう 方法です。これはTORGなんかが相当します。 TORGの場合ですと、地域によって世界が違うという感じだったわけです。

ただし、どの世界の出身であるPCがパーティー内に表われるかは デザイン時には分からないため、基本的にあらゆる世界にまったく同一の ルールで対応できなければなりません。 多少は世界独特のルールが有るかもしれませんが、 それはあくまで特殊な追加ルール扱いにしなければならないでしょう。

#.#. Module

2つめの方法は、モジュールというかサプリメントというかごとに 世界を設定する方法です。 これはGURPSもそうですし、TWERPSもそうです。 ま、ある意味、次に述べる Engine に対してサプリメントが沢山 存在するというものにすぎないとも言えるでしょうけど...

この場合、Multi-Settingとは異なり、設定の全ての組み合わせで 遊ばれる可能性は低くなります。 そのため、もしかしたら世界ごとにPCを表現する数値に若干の違いが 出てくるかもしれません。

また、Multi-Settingに比べて世界の多様性あるいは組み合わせは 非常に自由になってきます。

#.#. ENGINE

3つめの方法は、いわゆるエンジンにしてしまう方法で、 判定方法や能力値、技能、物品を挙げておいて、 すきなように組み合わせて世界を作って遊びなさいという 方法です。 言わば、MODULEのいくつかのサプリメントを(あるいはその概要を)、 一冊にまとめたものと言っても良いでしょう。 ただ、こちらには世界設定は基本的に付いてきませんが。 まぁエンジンと言っても、ものによっては判定方法とかの 基本的なところしか決めてないものも有りますが、 それがさらに進むと次の4つめの方法になります。 まぁ、これもいろいろと有るんですが(Dream Park とか FUZIONとか SOLとか Infinite 何とかというやつとかね)、 商用のものではメジャーどころだとDeram Park とか他にもあると思うけど。

#.#. Shell (あるいは Tool-Kit, Meta-System)

で4つめの方法は、例えば「判定方法の基本はこう」だとか 「能力値や技能の設定方法はこう」という情報が 与えられているだけというものです。 つまり、遊ぶ人に、システム(能力値の設定から技能の設定、物品の設定、 世界の構築)を作ってしまえと言っているわけです。 Ultimate Power (確かUltimate Powerは、自分のことを "Shell" だと言ってたような 気がするけどな)とか D6 が、こんな感じですね。 Fuzion も meta-system だと言っていますね。

うーん、これだとEngine との差が分かりにくいですかね。 別の言い方をするなら、個々のルールやルールの作成方法というパーツや 手引書が用意されていて、各GMがそれらのルールを組み合わせたり 手引書に従ってルールを作成したりというものが shell になるわけです。 Engine は、どのような世界でも、あるいはどのGMでも統一的なルール (えーと、ハウスルール的付加物は除きます) ですませるのに対して、 shellになると、同じシステムを使っていても実際のルールは GMや世界によって違っているかもしれないわけです。

#.長所と短所

で、まぁそれぞれに問題が有るわけですが、 MULTI-settingだと、1つのPCで様々な世界設定で遊べることは遊べるのですが、 逆にPCがどのような設定の世界にも入れるようになってしまうため、 世界ごとにPCの強さというか役に立ち方が極端に変わってしまう問題が有ります。 世界設定によって多少の有利不利が有るのは当然ですが、 例えばファンタジーの人間がSFの世界に行って何ができるかということです。 もちろん逆でも同じですが。 まぁ、それを楽しめるプレイヤーなら、こんなことは問題とは思わないかも しれませんが。 ただし、その行き来が非常に楽であるという利点も有ります。 作る側からすればたまらないですが...

MODULEの良い点は、複数のモジュールを繋ぎ合わせて、 GMの作りたい世界を作り出せることでしょう。 とは言うものの、GURPSのように1つ1つの世界設定が綿密だったりすると、 それを繋ぎ合わせるのにかなりの作業が必要になったりもするでしょうけど。 その点TWERPSなんかは1つのモジュールの記述量も 少なく繋ぎ合わせやすいと思いますが。 まぁ世界設定が綿密かおおざっぱかは使う人によって使いがってが違うものだと 思います。設定がおおざっぱだと、残りを埋めるのが大変だということも 言えるかもしれませんし。 ただ、MULTI-SETTINGで可能だった、どのような世界でも同一のPCで 遊べるという条件は、MODULEではかならずしも実現されるとは限りません。 まあだいたいにおいて何とかなるとは思いますけどね。

で、ENGINEやSHELLだと、んーたぶん大多数の人がとまどうんじゃないですかね? 世界を自分で作れって言われてもねぇ。 その点、まぁENGINEの中に入ると思うけど、Dream Parkは面白い設定です。 Dream Parkというのはアメリカに作られた、ホログラムやロボットなどなどの テクノロジーを駆使した、ライブRPGをできるテーマパークという設定なのです。 で、PCは、Dream Parkに遊びに来て、そのライブRPGをやっている人という ことになります。 だから、細かく言うと、プレイヤーは、Dream Parkに来た人がrole-playしている PCをRole-Playするというちょっと面倒な感じになります。 もっとも、「プレイヤーがDream Parkに行って遊んでいる」とすれば 分かりやすくなりますがね。

で、このDream Parkの場合、同じPCでどんな世界に行ってもOKなんですね。 もちろん参加するシナリオによって世界はガンガン違うわけですが、 でも、それは遊びなので(えっとDream Parkの世界において、 遊びであるということね)、何の問題も無しなわけです。 場合によっては、シナリオに合わない技能や物品は一時的に 使用を禁止されます。とは言え、これは例えば現実のコンベンションに PC持ち込みで行った場合なんかにも十分起こることなので、 やっぱり問題無しだったりしますが。

というわけで、ENGINEというと、世界を構築しなければならない 面倒さが有るわけですが、Dream Park はそこを「だって遊びじゃん」という 思想をシステム自体が取り込むことで解決してしまったわけです。 こんな感じで、「ここは私(GM)の夢の中だ」的な設定で、Dream Parkと 同じように「細かいことは気にしない」的に解決してしまう ENGINEが出てきても良いような気がするんですが、 まだ無いみたいですねぇ。 あ、いや翔企画のナイトメア・ハンターがそんなんか...GMの夢のなかでは ないけど。

そんなわけだから、何かENGINEを持っていて、 どう使ったら良いか悩んでいる人は Dream Park の設定を貰っちゃうというのも 1つの方法ですな。

さて4つめの方法であるSHELLですが、これはENGINE以上に極悪です。 ENGINEの場合、少なくともある程度は能力や技能なんかは設定してあるのですが、 SHELLになると能力や技能の作り方が書いてあるだけだったりするわけです。 例えば能力値の幅は1から10までである。10を越えると人間ではないとかね。 D6なんかは結構遊んでいる人がいるらしいんですが... 正直なはなし、どういう使われかたをされているのかが分からない。 オリジナルのRPGを作りたいけどシステム部分を作るのは面倒という人に とっては、作り方の指針が示されているぶんSHELLを使ったら楽になる ということも有るかもしれませんが... わざわざそのためにSHELLを買うかどうか..。 すでに持っているRPGのシステム部分を真似して作っちゃう方が早いと 思うんですけどね、慣れてる分。 あぁ、だけどそれだと発表しようとしたときに問題が出てきちゃう可能性が有るのか。 SHELLだったら、「このSHELLを買え」ということで済んじゃうのかなぁ? D6って同人RPGに使った場合の扱いはどうなってたかなぁ。 あるいは、Engine を使うとか、 MODULE の基本部分を使うとかということも 考えられますね。

で、もちろん、汎用という意味で、どのような世界で遊べるかという自由度は、 MULTI-SETTINGが一番低くて、SHELLが一番高いわけです。 そりゃぁ当りまえで、MULTI-SETINGは、複数の世界が有るとは言っても あくまでデザイナーが設計したものに限られるわけです (TORGだとポケット・コズムと言って、GMが自由に設計できる余地を 残していましたが)。 それに対してSHELLになると、まぁ基本的な判定方法の考え方なんかは 設定されてはいるものの、そのほかの部分はもう好き放題に作れるわけですから。

だからまぁどうしたといことは無いんですが、汎用システムと言っても (いや汎用ルールと言ったほうが良いかなぁENGINEやSHELLだと)、 いろいろ有るというわけです。

あぁ、そうそう、分類に困るのが Murphy's Worldと The Tales from Floating Vaga Vond。 これも一種の汎用システムで、おそらくはMULTI-SETTINGになるんだろうけど、 どっちも一言で言えば「めちゃくちゃな世界である」という世界設定で すましてるんだから...。

まぁ、ともかく、私の一番のおすすめは、やっぱりDream Parkだったりします。 考えている世界のテストにも使えるし、キャンペーンもできるし、 次元トラベルやタイム・トラベルもOKなんだから。 なにしろ「これは遊び」なわけで、こまかい事は気にしないという前提が 有るから楽なんだわ。

で、これまではとりあえず汎用ということで考えてきたわけですが、 実は汎用とは別の軸として「統一的」という軸もあります。 これは早い話が 同一のPCでいくつもの世界で遊べるかという条件だと思ってください。 こういう条件を入れてくると、 MULTI-SETTINGは問題無くOKとしても、MODULE以降の3つは システムとGM次第ということになります。 というのはMODULEでも、現実問題として、サプリメントつまりは世界ごとに 能力値や技能が異なっていることが有るわけです。 そこをどうやってクリアするかが、問題になるわけです。

特に、これまでミクロマンをやってたのに、 突然マクロスになったりすると尺度が違いすぎるわけです。 おまけにミクロマンとマクロスが闘うような世界だったら もう目もあてられません(宣伝になっちゃうけどSigmaはとりあえず 対応可能です。TORGもそういう世界は設定されてないけど、 大丈夫なんじゃないかな原理的には。やって面白いかどうかは、別の話ね。) しかも仮に人間を基準にいろいろな数値を設定してたりすると、 じゃぁミクロマンになったらその数値(例えば能力値としましょうか)は 一律何分の一にしちゃっていいのかというとそうは行きません。 逆にマクロス(あの母艦さいずのPCね)になると 一律に何倍にしちゃえば良いのかと言えばそうも行かないわけです。 ここをどう処理するかからはじまって、まぁいろいろと問題が有るわけです。

ENGINE、SHELLだと、この問題はまぁ残ると言えば残るし、 問題は無くなると言えば無くなるわけです。 なんと言ってもその世界はGM次第なわけですから。

#.方法

汎用ルールを作る場合(とりあえず世界の問題ではなく、 ルールのほうの問題を考えます)、 大きく分けて2つの方法が有ります。 1つは、TORGやΣのように何らかの統一的な尺度を作り、 世界をそれに合わせる方法です。 これは、統一的なものを目指す方向と言えるでしょう。 その尺度というのがある部分では足枷になりますが 逆にその足枷がそのまま長所にもなります。 例えば、魔法だとか超能力だとかスーパー・パワーなんかを表現しようとすると、 場合によってはその尺度と矛盾を起こる場合が有りますが、 逆に、その尺度があるからこそ小さいものから大きなものまで統一的に 扱えるわけです。

これと逆に位置するのがTWERPSに見られるような、 余分なものを削ぎ落としていく方法です。 この場合、統一的な尺度というのは有りません。 有るとすれば、PCを表現数値と判定方法のかねあいから得られる ものだけです。 つまり、世界設定によってはある数値が表現する内容 (強さと言っても良いでしょう)の 意味を変えてしまうことができるわけです。 統一的な尺度を作る場合だと、これがあまりやりやすくありません。

もちろん、例えば同じ武器であっても、世界ごとに設定されるダメージが違っても かまわないのですが、その数値は変えられても、 PCのたとえばヒットポイントの意味は変えられません。

つまり、尺度を作らないほうだと、世界ごとに、PCのHPは10が平均的だとか、 あるいは10だとスーパーヒーローだとかかなり自由に設定できます (えーと、実際には判定方法との兼ねあいが有りますから、 もろに完全に好き勝手にというわけではありませんが。) それに対して尺度を作るほうだと、HPが10のPCはあくまでHPが10のPC でしかないのです。 というのは、例えば人間の体の強靭さをどのように規定するかも、まぁ問題なの ですが、統一的な尺度を作る場合、位置エネルギーだとか 運動エネルギーだとかをその尺度の中で表現できてしまうため、 人間が地上10mから落ちたらどうなるかということがそのまま その尺度の中で決められてしまうわけです。 まぁ人間じゃなくても良いんですけど... そういうかなり絶対的な指針ができてしまうため (これはデザインする場合だけでなく、GMにもこの指針が明確に理解されて しまうため)、 この世界ではこう、こっちの世界ではこうというふうに PCを規定する数値の意味を変更することができなくなってくるのです。

で、そういう統一的な尺度が有るのは良いことも有れば都合の悪いことも 有るのですが、 そういう尺度を使うにしろ使わないにしろ、結局は様々な物品や 能力などについてリストを作って解説をし、具体的な数値を示さなければ いけないわけです。 つまり、どっちにしろ同じことをやるわけです。 だったら、そんな尺度をつくる必要なんかなく、 判定方法からの制約だけで十分だ、 という考え方も確かに正しいわけです。

で、この時点での考え方で作られている(というより時代的には 統一的な尺度を作るというアイディアが出ていなかったからか..)のが、 GURPSあたりということになるでしょう。

この考え方を進めると、 どうせそうなら、そんなにPCを表現する基本的な数値(だいたいは能力値という ことになりますが)も別に大して必要ないじゃん。 どうせ普段使うのは技能なんだし(D&Dの発表当時はいざしらず、 現在ではこう言いきって問題無いと思いますが)、 どっちにしろ技能のリスト必要なんだしー、 ということになり、TWERPSに至ることになります。 まぁTWERPSとはちょっと別のアプローチをしたのが私のdelta と Luck!に なるわけですが(Luck!で、なぜ 2d6 - 2d6 で判定するようにしてるのか? なぜ、もっと単純な判定方法にしないのかは内緒。 いずれその理由となるシステムを発表します。 ただ時間かかりそうなんだよなぁ...あと5年くらいくださいね。 まぁ、1つの理由は運ポイントの上限が10という区切の良い数字にした場合、 2d6 - 2d6 で得られる範囲が都合が良いってのが有りますが)。