RPGは芸術か?

まず始めに、RPGに限らず最近は誰でも「アーティスト」にしたがる 傾向が有るように思う。 しかし、正直に言おう。私には芸術は分からない。 それゆえ「アーティスト」と呼ばれている人の仕事を見ても、 それが芸術であるかどうか分からない。 ここで「アート」が、技術という意味で使われているのならば、 彼ら「アーティスト」は確かに「アーティスト」であるとは思う。 しかし「アート」が芸術と意味で使われているのであれば、 私には彼らが「アーティスト」であるのかどうか判断できない。

しかし、私個人の価値判断として、その作品がすばらしいものか そうでないかの判断基準は有る。 それは簡単、「私にとって心地良い」かどうかだ。 ここで「心地良い」と言っても、文字通りの意味だけではない。 私の役に立つ物も含むし、例えばギーガーの絵のように気味が悪くても 見ずにはいられないようなものも含む。 言葉ではうまく説明できないが、それらも含めて私には「心地良い」のである。

なぜこんなことから書き始めるかと言えば、 最初に書いた「誰でも『アーティスト』にしたがる傾向」というのは、 別の言い方をすれば「何でも『アート』にしたがる傾向」が有るということなのだ。 この「アート」が技術を意味するならば別に何の問題も無い。 しかし、私の耳にはこれが芸術を意味するものとして聞こえてくるのだ。 そして、そこには「アート」であることが一種のステイタスのような、 いわば「アート」以外を見下すような響きが聞こえるのだ。

そもそも遊びであるRPGがなぜ芸術にならねばならないのか? いや、例えば、ブリッジにせよ何にせよ、遊びにおいても そのプレイヤーの素晴しい技巧を差して「アート」と言うのは分かる。 それは、"art"の意味に含まれているからだ。 しかし、遊びそのものがアートであるという考えにはどうも慣れることができない。

あるいはRPGのシステムを差してアート(もしくはartistic)であると言うことは 分かる。それは製作者の技術や技巧を差しているだろうからだ。 しかしそれは芸術という意味とは違う。

では、シナリオに対してアートと言うことは有るだろうか? もちろんシステムと同じ意味で使うことは有るだろう。 だが、芸術という意味で使われるだろうか?

では、リプレイについてはどうだろう。 リプレイはかなり文学的要素が強くなる。 とすれば文学作品として芸術であると言えることが有るかもしれない。

リプレイが芸術であるなら、その元になったセッションはどうだろう? セッションにおいてもプレイヤーやGMの技巧というものは確かに存在する。 その意味でアートと言うものは存在するだろう。 しかし芸術という意味ではどうか? 演劇は芸術に一種ととらえられているから、 もしかしたらセッションも芸術の一種と認められるかもしれない。 ただし、鑑賞に耐えうるものならばだが。 そもそもRPGは鑑賞されるために行なうものではない。 いや、もちろんプレイヤー間においては鑑賞ということも有り得るが、 芸術における鑑賞というのは第3者による鑑賞を差しているだろう。 だいたい、RPGにおいては(少なくとも現在のプレイ・スタイルにおいては)、 説明が多すぎる割に、描写が少ない。 これでは第3者の鑑賞には耐えないだろう。

ところで、RPGが芸術であったとして、何か変わるのか? 公民館を借りたコンベンションで参加者のマナーが悪くとも、 「彼らは芸術家だから...」などと言っておおめに見てくれるのか? いやいや、別に何も変わりはしないだろう。 一般に芸術家というのは、芸術家として一般に認められた人を指す言葉だからだ。 その辺の若ぞうを、誰が芸術家と呼ぶだろうか?

芸術と言う言葉には、何か「他よりも高い位置にあるもの」という 響きを感じる。 これは私に身近な言葉だから感じるのかもしれないが、 「研究」という言葉がなにかほかの行為より高い位置にあるものとして 人々に感じられているらしいことも同様である。 しかし、そうではないのだ。芸術であろうと、研究であろうと、 人間の行なう活動の1つであり、他の行為とその位置の高い低いなどという 違いは無いのだ。

つまり、RPGを芸術と呼びたがる人は、何か自分のやっていることは 他のことよりも高い位置にあるものであり、 それゆえに自分自身も他の人より高い位置にいるのだと言いたがっているように、 私には聞こえるのだ。

RPGは芸術などではない。単なる娯楽である。 ただし、娯楽と言っても様々なものが有る。 一時を過すだけのための娯楽から、 修練を必要とするものまで様々である。 RPGはどちらかと言えば修練を必要とする娯楽であろう。 であるから、どこかで「アート」と呼ばれる可能性は有る。 しかし、それは芸術ではなく、技巧の意味においてだ。

RPGの個々(システム、世界、リプレイ)においては、それぞれ"art"と呼ばれうる 要素が有る。しかし、RPGとは遊ぶものであり、そのセッションが "art"と呼ばれうる要素は無い、もしくは非常に少ないように思われる。 特に鑑賞の問題は上に書いた通りである。 このような問題が解決されたならば、もしかしたらRPGのセッションも 芸術と呼ばれうる日が来るかもしれない。 しかし、仮に来たとしてすべてのRPGが芸術になり、 そしてすべてのRPGプレイヤーが芸術家になるわけではない。

そもそもRPGを芸術と呼びたい理由が分からない、 おまけに私には芸術が分からにので、 RPGは芸術とは言えないだろうとは思うものの 適切な反論ができない。 誰か私に良い知恵を下さい。