ファンタジーRPGでSFを ('98/7/14, ver. 0.1)

さて、SF好きなGM (player) の皆さん、SF-RPGを遊べていますか? 現在、日本においてはSF-RPGは非常に少数しか存在しません (あるいは手に入りません)。 おまけに多くのプレイヤー達はファンタジー大好きであり、 SF-RPG好きの皆さんは疎外感をお持ちのことと思います。

また、例えばNOVAなど、SFっぽいRPGも存在することはします。 しかし、例えば私はNOVAは大嫌いです。 あの雰囲気、PCの強力さ、全て嫌いです。 Metal Head という半死半生のRPGも有ることは有りますが、 あれも、私は大嫌いです。 この NOVA と Metal Head 双方に共通して言えることは、 共にサイバー色を打ち出しているにもかかわらず、ちっともサイバー・パンクでは ないことです。 もちろん、それはそれで1つのジャンルというか色であるとは言えますが、 私は嫌いです。 みょうに友情だのなんだのと言っていたり、 みょうにPCが正義の味方やヒーローぽかったり... あまりSF的とは言えないものと思います。

このように、好みの問題を抱えている方にも、そしてともかくSFを遊びたいという 方にも1つの提案が有ります。 それが「ファンタジーRPGの名を借りて、SFを遊ぼう」 というものです。

具体的には、ちょっと制約が強くて、SFとは言ってもポスト・ホロコーストの 系統にあるものが中心になりますが。 とはいえ、持って行きかたで、もっと広い系統を 遊べるようになるものと思います。

では、具体的に話を始めましょう。

時代

時代は、原則として最終戦争以後の世界になります。 いずれにせよ、コンピューターの破壊 と、多くの技術者の死により、 戦前の科学技術の大半は失なわれてしまい、 おそらくはこれからも衰退の一途を辿ると考えられる設定です。 この「衰退の一途を辿る」かどうかというのは、皆さんの考えしだいで どうにでもなる部分ですから、これは大きな選択肢と言えるでしょう。

SF色(ポスト・ホロコースト色)を強くしたければ、 戦後数年くらいのところを舞台にすれば良いでしょう。 あるいはファンタジー色を強くしたければ、戦後20年以上の時代を舞台にすれば 良いと思います。 この違いは、戦前のことを覚えている人がどれだけいるのか、 およびその情報の正確さということになります。 付け加えるなら世代交代も大きな問題となるでしょう。 例えば、戦後50年以上経過した世界では、戦前のことはかなり伝説に近くなっている という設定も可能になるはずです。 というわけで、どのくらいの時代を舞台にするかも大きな選択肢の1つです。

ただし、放射能はともかく、ウイルスに関しては、生物工学で 生存の条件が厳しく制限されていたという設定が必要になるでしょう。 例えばほんの数世代だけとか。 もちろん、ウイルスは突然変異が激しいですし、そこの放射能の影響が 加わればどうなるか分かりません。 ただし、そういう条件をつけなければ、人間が生き残る世界を 構築するのが非常に困難になります。

モンスター

ファンタジーRPGにおいてモンスターは重要なキャストです。 ですから、これをどうやってSFに引き込むかによって、SF色を強くしたり、 ファンタジー色を強くしたりできます。

基本的には放射能(核兵器)やウイルス(生物兵器)の影響によって、 ミュータント化した人間や動物としてモンスターを扱うことにします。

これも、ファンタジー的モンスターとして、いわば種として定着したような 感じになればファンタジー色を強くできると思います。 もちろん、現実に種として定着するにはかなりの年月が必要ですが、 どうせ虚構なんですから、それに近いような状況になるとかなんとか という設定はどうにでもなるでしょう。 ゴジラ的変異というのは、虚構においては重要なファクターと考えられますし、 馴染みのあるものですから、受け入れられやすいでしょう。

また、逆に被曝やウイルスの影響を強く表現すればSF色を強くできるものと 思います。 ただし、被曝やウイルスの影響によって、外見だけがおそろしいものに なっているというだけでは、モンスターとして扱うのには不適当です。 第一に、たんに見た目がおそろしいだけですからね。 それに加えて、何か心理面までも、もともとの生物とは異なり、 モンスター化したという設定が必要になるでしょう。 ウイルスによるモンスター化の場合であれば、残留ウイルスが恐ろしいという 設定も可能ですが、それでは手を出せなくなってしまいます。 むしろ、たんに被曝やウイルスの影響で知性の後退、凶暴化が起こったという 設定ですませるほうが良いのではないかと思います。

もちろん、戦争直後くらいであれば、被曝による被害者は手厚く看護される 可能性も十分にあります。 それに対し、ウイルスの発病者は、そうはならない可能性が高いものと思われます。 被曝は感染しませんが (放射性物質をちゃんと洗いながすなどすればね)、 ウイルスのほうは感染が懸念されるためです。

また、日本において (おそらく世界においても)、癩病患者はその治癒を祈願して ひっそりと巡礼を行なったということが有るらしいのですが、 戦後しばらく経過すると、被曝者やウイルスの発病者が同様の巡礼を行なう可能性も 考えられます。

さらには、被曝者、発病者ともに、人里離れた山間などで単独もしくは少数の 共同体を作ってひっそりと暮すことも考えられます。

いずれの場合も、人々から迫害される可能性はもちろん有りますが、 むしろ恐れられるとともにうやまわれるような可能性もあります。 マレビトであるとか山の神のような扱いを受ける可能性が考えられるわけです。 その場合、その巡礼や共同体に属する人がそれほど頻繁にその町や村に姿を 表わさないということが重要かもしれません。 また、被曝などについてのある程度の知識がそれらの町や村に伝説として、 歪められながらも残っていることも必要かもしれません。

また、ファンタジーにおける山賊などのようなものは、 そのまま持ってこれるはずです。 ただし、たんに金品をせしめるというよりも、その村などにとって明日を生きるために 必要な食料や資源をねらってやってくるバンデッドというのが イメージとしては良いと思います。 それがバイクなんかに乗ってやってきたらもう最高ですね。

武器、物品

SFですから、多少の火器や自動車、バイクなどを登場させるのは 非常に良いことでしょう。

ただし、いずれも現在は大規模工場で製造されていますが、 そのような大規模工場は最終戦争によりほとんど破壊されてしまっていますし、 またコンピューターがほぼ全滅であることから、工場自体は無事であっても 稼働できなかったり、あるいは部品や原料の輸送という問題から 稼働できなくなっています。

そのため、火器 (弾)、バイク、自動車などは小規模な工房によって 生産およびメンテナンスがなされており、 非常に高価になっていると考えられます。

火薬の原料は、そのへんでどうにもでも作れるのですが (たしか、小便からでも 時間が有ればなんとかなるし)、 自動車やバイクの燃料の生成はかなり難しくなっています。 石油も細々と採掘されていますが、その量は微々たるものと考えられます。 それに変わってアルコール燃料が多く使われていますが、 やはりこれも大規模農場や高効率蒸留が困難であることから 燃料として使えるものは少量にすぎません (ガソリンエンジンから アルコールエンジンへの改造はなんとかなっているものとします)。 ただし、これも設定しだいで、ある程度情勢が安定しているならば、 燃料精製工場のようなものも設立可能でしょうから、 燃料は比較的安価になっているかもしれません。 とは言え、 燃料の値段は、おそらくランタンなどの油の2倍から数倍程度になるものと思います。

また、自動車やバイクの燃費は悪くなっていると考えられます。 1つには燃料が高価であることもそうですが、 コンピューター制御による低燃費化が行なえなくなっていることも考慮に入れなければ なりません。 そのため、バイクや自動車に乗っていること自体が一種の ステータス・シンボルであるか、 あるいは略奪によっているかということになるでしょう。

商人なんかは、自分の信用を見せつけるために、わざわざ自動車を 使っている可能性も考えられますね。

とは言え、バイクや自動車をずっと使えるかというとそうもいきません。 バッテリーの消耗、オイルの汚れ、プラグやエンジンの摩耗などが大きな 問題になるはずです。 バッテリーのほうは、モーターや小型発電器をどうにかして、 多少はなんとかなるかもしれません。ただ塩酸とかの薬剤がちょっと厳しいですが。 オイルについては、エンジンの場合、高温になりますから、合成物でないと無理が 有るでしょうねぇ。でも、どっかで代替物がみつかったとしてしまうことも 可能でしょう。 プラグに関しては、意外にどっかに埋もれていると考えられなくもありません。 以上は、何とかならないでもないと言えますが、エンジンの摩耗だけは どうにもなりません。 ですから、バイクや自動車を使えるのは、せいぜい戦後20年から30年くらいが 限界ではないでしょうか。 もちろん、そのあいだにせめて鉄の精錬技術が十分に回復すれば 話は別かもしれませんが。

その他のファンタジー的物品は、なんとかなっていると考えましょう。

武器の強さとしては、火器はだいたいにおいて剣と同程度のダメージを与える ものと考えられるでしょう。 価格は、剣の2倍とか3倍とか、かなり高価になるはずです。 もちろん、弾も高価で、1発でナイフなどの1個くらいの値段はあたりまえでは ないかと思います。 もちろん、薬夾を拾っておいて、火薬と鉛 (と、雷管だっけ?)を 再充填するのであれば 、価格はもうちっと安くできるでしょうけど。

バイクや自動車の価格は想像もつきません。

情報の流通

ポスト・ホロコーストにおいて、情報の流通経路を再開発するというのは 非常に大きなテーマになりえます。 もろに「ポストマン」という小説および映画まであるくらいです。 ただし、これは戦後数年くらいにおける重要課題と言えるでしょう。

その後は、ローマ帝国 (もちろん日本でも) などで取られていた 早馬によるリレー式伝達が主になっているはずです。 もちろん、バイクによる速便というのも考えられます (上記時間制限付き)。 ただし、次の魔法と関連し、特殊な場合には魔法による伝達が 行なわれている可能性もありますが。

魔法

ファンタジーRPGにおける魔法を導入する場合、いくつかの方法が考えられます。

1つは、ミュータント化などにおける超能力として扱う方法です。 2つめは、魔法が世界に蘇えってきたとする方法です。 3つめとして有効と思われるのが、失なわれた技術を保持していることによるとする 方法です。

いずれにせよ、ファンタジーRPGに設定されている魔法の中から、 いくつかを使用可能にする程度となることと思います。

特に3つめの方法を取る場合、そこから世界が広がっていくものと思います。 現在、そのような方法による世界を製作中です。モンスター・メーカー用にす るか、あるいはDelta用にするかはまだはっきりしませんが、とりあえず、近 いうち (98/秋前)に公開する予定です(Σ-Methuselahが、それです (2001/06/04))。

おわり

さらに、地域による技術格差というのも有りえます。 古い技術が残っている地域、新たに再開発した技術を持つ地域などなど 考えられます。

さらに、技術再興を目指す地域もあれば、技術を棄てる地域も有るでしょう。

荒廃した世界を再び平和にするために、何らかの軍が力を持つという 設定も有りえるでしょうし、宗教が力を持つという設定も有りえると思います。 どちらかと言えば、宗教が力を持つという設定のほうが ファンタジーには馴染みやすいかもしれませんね。

で、これをどう使うかというと、特にファンタジー色が強めの設定から始めて、 次第に「この世界はPCが知っていたはずの世界ではない」という情報を 出していくわけです。 最終的には、かなり好みに近い世界に持って行けるものと思います。 近いうちに公開する予定の設定では、ファンタジーから始まって、 サイバー的設定を取り込み、 惑星間貿易までとりあえずは可能なようにする予定です。 もちろん、ロボットも出てきますし、異星人 (ただし元は地球人) も 出します。 まぁ、この記事を読んでいただければ、同様のものを たぶん自力で作れるものと思います。

えーと、何か忘れてることが有るかもしれませんが、とりあえずこんなと ころで。何かありましたら、skoba@hamal.freemail.ne.jp までメールをくだ さい。