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# 学院における老教授と、新たにユーザーとなった助手の会話
- 教授:
- 「
まずはおめでとう! 君は我々の仲間になり、既にリンカや
ネットワークの基礎的な使い方は学んだわけだ。
そして魔法の真実を知り、いや、もちろん判っている真実など
ほんの少しのことだが、その力を行使し、世界を良い方向に導く仲間に
なったわけだ。
だが、これからは厳しい日々が待っているよ。
いや、もちろん研究自体も厳しいが、それよりも
魔法の真実を知り、秘密を守り、また誤解に耐えていくことの方が
厳しいことだ。」
- 教授:
- 「
さて、何から話したら良いものか...今から250年ほども昔のことだ。
人間はすばらしい科学技術を持っていた。
しかし、人間とはいつでも変らないものよ。
その力で、大きな戦争を始めてしまった。
人間が作りだした小さな小さな生物も使い、
この星を何回も燃やし尽せるほどの炎を生みだす爆弾も使ってな。
」
- 教授:
- 「
古い記録にこういう言葉が有る。
『充分に発達したテクノロジーは、魔法と見分けがつかない』
これはまさしく真実だ。
我々には、祖先の作り出した科学技術のほんの少ししか理解できていない。
祖先の作り出した科学技術の残り滓をかろうじて使っている
だけなのだが、その強力さから、それが魔法と呼ばれてしまっているのだ。
」
- 教授:
- 「
例えば、君が先日さした目薬だ。
あれが何なのかまるで分からない。
顕微鏡で見ると、中に何か入っていることは分かるのだが、
なぜあの目薬をささなければリンカを使えないのかはまるで
わかっていないのだ。
」
- 教授:
- 「
それだけではない。
そもそもリンカがどのような働きをしているのかさえ、
リンカのどのような働きによってあれだけの事ができるのかも
分かっていないのだ。
一般にあのリンカが何と言われているかは知っているかね?
」
- 助手:
- 「
はい。悪魔が入っているとか、悪魔との契約書が入っているとか、
あるいは天使が入っているとか神との契約書が入っている、
あるいは妖精や精霊が入っているなどという
話を聞いたことがあります。
その他にも、この星の大気の外を回っている城の中には
長寿属が住んでおり、リンカはどうにかしてその長寿属に
こちらの願いを届けるものだとも聞いたことが有ります。
」
- 教授:
- 「
そうだ。
しかし、少なくとも事実の一端を今では君も知っているわけだ。
少なくとも、あの箱の中には悪魔も神も、そしてそれらとの契約書も
入っていない。なぜなら、我々はそんなものと一度たりとも
契約をしていないし、妖精も精霊もとらえてなどいないのだから。
そして、一度機会が有ったら望遠鏡で星を見てみるが良い。
こちらは伝承のとおり、確かに何かがこの星の周りを回っている
のが見えるだろう。
もちろん、それとリンカとの間に何らかの関係が有るのか、
あるいは何の関係も無いのかはまったく分からないのだが。
」
- 助手:
- 「
教授、1つ質問が有ります。
なぜ先祖達は、それほどまでに科学技術を発展させたのでしょうか?
」
- 教授:
- 「
もちろん、多くの記録が失なわれてしまったために、
その理由は分からない。
とは言え、いくつかの仮説が立てられている。
1つは、人間とはそういう生き物であるというものだ。
確かに、今に生きる我々もまた科学を発展させてきていることを
考えると、この説にも説得力は有る。
」
- 教授:
- 「
だが、別の説も有る。
例えば、『魔法の国が消えて行く』という古い資料に書いて
あることなのだが、
おそらく数千年ほど前のことらしいのだが、いや、もちろん
もっと前かもしれないが、
"マナ"と呼ばれる、魔法の力の源、もしくは力の増幅を行なう
資源が枯褐してしまったらしいのだ。
そこで、人間は科学技術を発達させて、そのマナによらずに
魔法を回復、いや、その代替物を得ようとしていたというのだ。
なるほど、確かに彼等の科学技術の着想がどこから得られていたのかは
大いなる疑問だ。
」
- 教授:
- 「
しかし、それに先立つ何かによってそのような現象が行なわれて
いたのであれば、その再現を目指したとしても不思議ではない。
だが、全ては謎のままだ。
」
- 助手:
- 「
教授、他にも質問が有ります。
先祖達の時代から、すでに250年あまりも経っていると先程
おっしゃいましたが、なぜリンカは未に動作するのでしょうか?
また、仮に長寿属が存在するとして、彼等は一体何者なのでしょうか?
」
- 教授:
- 「
リンカーについては、1、2度中身を見たことがあるが、
透明なシートに金属で模様が書いてあり、所どころに小さな石が
あるようなものと、2つの黒い石でできた箱が入っている。
その1つは磁石と、細い導線を巻いたものが入っていたのだが、
その箱を振るとその磁石が分銅のようになって周るのだ。
おそらくそのしかけのおかげで今でも動いているのだろう。
もちろん、どうしてそれで動作するのかは分からないが。
そして長寿族の方だが、こちらはあくまで伝承でしか分からない。
祖先が作りだした、考える石だと言う伝承も有る。
しかし、他の星まで遠く旅をした者の子孫だという伝承も有る。
あるいはその旅をした者そのものだという伝承も有る。
しかも、有る伝承によれば、長寿属は太陽の光で生き続けているというのだ。
」
- 助手:
- 「
そう言えば、宇宙人を見たという農夫の噂をいくつか聞いたことが有ります。
その噂を総合すると、まるでユーザーの『転送』のような
光とともに宇宙人が現われたというのです。
そして、農夫の『どこから来たのか』という問いかけに、
上を呼び指したと言うではありませんか。
もしかしたら、その宇宙人というものこそ長寿属なのではないでしょうか?
」
- 教授:
- 「
なるほど、面白い説だ。
だが、そのように長寿属が地上に降りてくることが有るのなら、
なぜもっと人の多いところに現われないのだね?
なぜ農夫の前に現われるのだろう?
我々の世界と接触を持ちたいのであれば、
現われる場所を選ぶのではないだろうか?
例えば、我々の前であるとか、あるいは教会の前であるとか、
あるいは議会の前でも良いだろう。
」
- 助手:
- 「
教授、お言葉ですが、もしかしたら彼らなりの理由が有って
辺鄙な場所に現れているとは考えられませんか?
私が調べたところでは、彼等が現われたとされる場所は、
いずれも古い遺跡が有る場所の近くです。
それも、その遺跡に入るのは禁忌とされ続けている場所の近くなのです。
」
- 教授:
- 「
では、彼等は我々には興味は無いが、祖先達の遺物には興味が有ると、
君は考えているわけだな?
長寿属が、祖先の科学技術を受け継いでいるとすれば、
それは充分に考えられるな。
だが、なぜ彼らは我々の前に姿を現わさないのだね?
彼等が考える石であれ、旅人であれその子孫であれ、
いわば我々の兄弟ではないか。
我々が科学技術を失ない、暗黒のなかにいるというのに、
なぜ彼等はこれまで我々を助けてくれていないのだね?
」
- 助手:
- 「
それについては....分かりません。
ただ、考え方によっては我々を助けているのかもしれません。
例えば、我々は今もリンカを使えます。
リンカが、上空の城と関係が有るとすれば、我々はその城を
長寿属に無断で使っていることになります。
彼等は城の機能を停止することもできるはずにも関わらず、
依然として私達に使わせてくれているのですから。
」
- 教授:
- 「
ずいぶんと消極的な援助だな。
だが、こうは考えられないかね?
上空の城は我々の祖先の作ったものだ。
だから、我々にはそれを使う権利が有るのだと。
」
- 教授:
- 「
もっとも、この議論は、いわゆる魔法についても同様だな。
魔法も常に望む効果が得られるとは限らない。
おそらくは上空に有る城の位置と関係が有ると思われるのだが、
いまだに実証されていない。
またそれゆえに、魔法は魔法と呼ばれているのだがね。
」
- 教授:
- 「
いずれにせよ、我々はまだまだ学ばなければならない。
いつの日か、祖先達の科学技術を取り戻すこともできるだろう。
」
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