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# 大震災以前

## 背景

明治45年(西暦1912)7月29日、日露戦争後の慢性的な不況の中、 明治天皇 が崩御し、翌30日に日本は明治から大正へとその元号を変更しました。この不 況の中、民衆は弾圧を押し切ってストライキを起こしたりしていました。中国 においても、明治 4 4年の辛亥革命によって清朝が倒れ、新たに中華民国が生 まれました。 日本は己の利権のために清朝を支持していたため、いきおい中 国における利権を英、米、独、仏などの西洋列強に奪われる可能性が生まれて しまいます。このような中で、明治最後の年は、東京市電のストライキのうち に訪れました。そこには、それまでの社会とは異なる何かへの変化の胎動とで も言えるようなものが感じられます。

大正3年に、4年半にも及ぶ第一次世界大戦が勃発すると、日本は独逸に対 する参戦という名目のもと、まずは青島(チンタオ)を占領します。その後も独 逸に対する戦闘という名目で撤退する独逸東洋艦隊の後を追い、その道すがら 東南アジアに対する侵略を行っていったのです。日本本土においても、軍需産 業によって不況から好況へと転換します。

大正6年の初頭、ロシアでは革命が起きます。この革命は11月まで続き、 世界初の社会主義国家を産み出します。日本はこれを好機と見て、夏には日本 軍指揮の元、英米列強と共にシベリア出兵を行います。

第1次世界大戦は、事実上大正6年の末に終結します。しかし、その後の戦 後処理において、日本と欧米列強は『アジアにおける利権』という同じ目的を 持ち、様々な確執を生みながら処理を進めていきます。その間にも、中国や朝 鮮における半日運動が燃え上がり、日本は更に問題を抱えることになります。

また日本国内においても普選問題、女性開放運動などが持ち上がり、日本 は慌ただしく揺れ動いていきます。< 1>


## 交通事情

交通機関ですが、一般的なのは人力車と汽車です。人力車の価格はおおよ そ10分で10銭程度。さすがに、人が引っ張るのですからそれほど早くはありま せん。おおよそ最高速度で時速20Kmというところでしょう。汽車は三区間まで 毎に 5銭程度です。路線図ですが、山手線は現在と同じ形で存在していますが、 その中に総武線(中央線) は通っていません。< 2>。

市内電車もあり、価格は一律5銭です< 3>。この市内電車は、 太い道路に はほぼまんべんなく路線が張り巡らされています。またタクシーも存在し、こ ちらは1Km で30銭です。また、貸自動車もタクシーと同じ、1Km走行につき30 銭です。< 4>

飛行船、飛行機もありますが、いかんせん一般市民には高嶺の花です。も ちろん既に旅客用の路線がほんの小数ですが存在しています。しかし、事実上 それらはほとんど軍用的に用いられており、一般人に対しては旅費が非常に高 いため一般市民にはどうあがいても乗れるような物ではないのです。極めてま れに社用などで利用する人がいるという程度です。< 5>

結局、人々が頻繁に利用するのは人力車とタクシー、汽車と市内電車とい うことになるでしょう。人力車とタクシーは1つの町にだいたい1つの集車場が あり、気軽に利用できるようになっています。貸自動車も、タクシーの会社が 経営していることが多いのですが、タクシー程に頻繁に利用される訳ではない ようです。


## 情報事情

新聞はかなり普及し、各戸に対しての配達も行われています。この場合、 一ヶ月の朝刊・夕刊込みの購読料は50銭でした。売り子による街頭売りも出て おり、一部 1 銭程度で購入できます< 6>。

また電話もかなり普及しています。特に、都市部の電話局には非常に大型 の解析機関を利用した自動交換機が設置されており、電話料金もかなり安価に なっています。例えば、市内電話の場合、5分間まで毎に1銭という価格になっ ています。市外の場合は、距離によってかなり異なりますが、おおよそ2〜10 倍程度の価格で済みます。 また、電話の基本料金も年間で10円程度なので、 中流程度の家庭には電話機があって当然という程度にまで普及しています。ま た、駅や公園などにも公衆電話が設置されている場合がほとんどです。電話機 の形式ですが、0〜9までの数字、そして"終"という計10個のボタンがあり、そ れで番号を入力します。これらのボタンを押すと、その数字を表す電気信号が 電話局の解析機関に伝わり、その最後に"終"というボタンを押すことによって、 交換作業が行われて電話がつながるのです。< 7>。

また、電報ですが、市内の場合は15文字以下で15銭、市外の場合は内地 (列島四島内)均一で15文字以下で20銭となっています。< 8>


## 治安事情

警官と言えども通常は銃器を保持しておりません。普段から持っている物 と言えば、サーベルと縄位のものです。もし銃器が必要になった場合、警察署 において貸与した程度です。ただし、警察から許可を得られれば、一般人であっ ても銃器の所持はできます。また、意外なことかもしれませんが、郵便配達人 は業務にあたっている間は常に銃器を所持しています。郵便と言えば現金書留 なども送られますが、それらをねらう強盗などに対処するためです。ただし、 配達人が銃器を持っているためでもあるでしょうが、実際にはそんな事件はそ うそうおきません。

警官の装備からも分かるものと思いますが、凶悪な犯罪はほとんどありま せんでした。ただし、この帝都東京においては明治以来、年に数回程ですが、 訳の分からない猟奇的な事件が発生し、その70%以上が事実上迷宮入りになっ ています。 この検挙率の低さから、一般人の間では、それら猟奇的な事件は 妖のせいだという噂が絶えません。警察もそれらの猟奇的事件に対処するため、 猟奇課という部署を持って取り組んでいますが、依然として検挙率は上がって いません< 9>。


## 商業事情

都市部にある百貨店などは、それらが呉服屋から発達してきたこともあり、 売り場は畳敷になっていました。そのため、入り口には下足場があり、そこで 靴を脱いで上がるようになっていました。商品も非常に幅広く扱っていますが、 それでも呉服、貴金属、化粧品などの高価なものが中心であり、例えば食料品 のようなものなどは扱っていません。それでも店内には喫茶室が設けられ、コー ヒーやラムネが一杯 5銭で飲めました。

百貨店から発展して来たとは言っても、それは所詮小数にすぎません。や はり一般的なのは町角での小売店です。喫茶店なども増えてきています。食堂 などでは、天丼が20銭程度で食べられます。たい焼きなどが1銭で売っていた り、キャラメル(14個入り)が10銭等々、お菓子類も多数あります。その他に、 具体的にどのような小売店があったかは、常識的に判断できるものと思います。

また書籍なども解析機関を利用し、活字拾いの自動化などにより非常に安 価に、また大量に販売されるようになります。おおよそ、月刊誌が一冊20〜50 銭程度と考えて下さい。<10>


## その他

また、英国ではすでにチャールズ・バベッジが開発した解析機関(機械式 の コンピューター)が普及し、日本も大会社や政府は解析機関を輸入して使っ ています。 ただ、この解析機関には騒音が激しいのと、電気の消費量が多い という 2つの問題点があり、それを克服するために、英国、独逸、米国そして 日本で独自にリレーを用いた解析機関の研究が行われています<11>。


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