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# 解析機関

## 解析機関の歴史

チャールズ・バベッジ(1791〜1871)は、1822年に 6桁の精度を持つ階差機 関を完成させ、その後に、より精度の高い階差機関の設計を行い、1833年には 20桁の精度を持つ階差機関を完成させました。この階差機関というのは、多項 式の値を差分法によって得ることを目的とした、機械式計算機です< 1>。

ついで、1833年から解析機関の設計を開始しました。この解析機関は刻印 板 (命令を板上の穴のある無しの組み合わせで表すもの)を用いてその動作を 制御する、 機械式の汎用計算機です< 2>。この解析機関は、残念なら が彼の存命中には完成しませんでしたが、1902年に英国王室科学協会の手によっ て完成されました< 3>。以後様々な改良(主に部品の小型化と機能の大 型化)がなされてきました。

現在では、10〜30桁の計算をできる、様々な大きさの解析機関がいくつか の会社から販売されています。いずれの会社の解析機関も電気モーターを用い て動作します。そのためかなりの電力消費があり、歯車の数も相当数に昇るた め発生する音もかなりのものです。また、解析機関を構成する歯車はかなり小 さいものであることから、いずれの解析機関もほこりなどを避けるために専用 の解析機関室に設置されていることが多いようです。もっとも、解析機関を設 置するには、そのような部屋を 1つは設けなければならないほどの大きさであ ることも確かです。

また、現在の解析機関の欠点である処理速度、騒音、電気消費量、そして 大きさを解決するために、リレーを用いた電気式解析機関の設計が英、独、米、 そして日本においてそれぞれ行われています< 4>。


## 解析機関の構成

解析機関は、本体のほかに、刻印板読取機が最低でも2つ、 そして出力機 も少なくとも1つ接続されています。この読取機のうちの少なくとも1つは、解 析機関に与える命令が記されている刻印板(算譜板< 5>)を読むためのも のであり、やはり少なくとも1つは処理を行う対象となるデータが記されてい る刻印板(資料板) を読むためのものです。また、出力機は計算結果を刻印す るもので、後に示すような人間が用いる刻印機からキーボードを取り去ったよ うなものです。より高級な出力機にはA〜Zのアルファベット、0〜9までの数字、 そして何種類かの記号を印字できるものもあります。ただし、このような出力 機を用いて紙に印刷するためには専用の算譜が必要です。また読取機は刻印板 を電気的に読み取り、それにしたがって解析機関の歯車を廻すため、刻印板読 取機及び刻印機と出力機は解析機関から多少離れた所に設置されている例もあ ります。なお、解析機関はだいたい1秒間に 10枚の算譜板や資料板を読めまし た。つまり、1秒間に100個の命令を処理出来たことになります。

刻印板は、幅3寸(約9cm)、縦2寸(約6cm)程度の物を使用しています。この 刻印板は、横方向に総計17個の穴があり、縦方向には10列あります。結果とし て、 1枚の刻印板には10個の命令が刻印できました。この横方向の穴の内、一 番左にある穴は、読み取り位置を確認するために用いられるため、実際に数値 や命令を刻印できるのは、16個の穴のみとなります。この穴の1つ1つをdotと 呼び、dotを4つまとめて、digitと呼びます。また穴の列の1列をlod(Line of Dot)と呼びます< 6>。また、 刻印板は、数値を表す際に、1桁ずつ2進 法で記述します。1桁の10進数を2進法で表すには、 4つの穴が必要ですから、 数値に関しては、刻印板1枚4*10 = 40桁の10進数を表せます。もちろん、1枚 の刻印板に複数の10進数を刻印することも可能ですから、その場合は、最高で 40個の10進数が刻印できたことになります。刻印板は、木や厚紙、あるいはセ ルロイドを用いています。

または、内部におよそ100個程度のlodを記憶できる記憶部が内蔵されてい ます。また、記憶部には小型リレーlodを用いた物もあります。これは、一つ が1cm*1cm*1cm 程度の立方体をした小型リレーで1dotを記憶し、この小型リレー 1digit分を一つの基盤の上に載せたものです。このリレー式記憶部は最新の技 術を用いたということで、かなり人気を博しています。

刻印板には刻印機を用いて命令やデータを刻印していくのですが、その際 に用いる刻印機は、0〜9の数字、20個程度の命令、そして数個の記号が印字さ れているキーが合計で40個弱付いています。それぞれのキーを押すことによっ て、刻印板にそれぞれのキーの内容を表す穴の並びが打たれるのです。この刻 印機は、解析機関や読取機、そして出力機とは異なり完全に手動ですのでいつ でもどこでも使えます。ただし、刻印板に穴を開けるという作業上、かなり大 きな音がします。


## 簡易解析機関

6桁程度の計算をできる簡易解析機関も発売されており、 おおよそ机の上 に載る程度の大きさであることから、個人的に興味を持っている人が購入し用 いていることもあるようです。ただ、机に載るとは言っても、簡易解析機関と 刻印機を載せるにはかなり大きな机が必要ですが…。この簡易解析機関はガラ スケースに入れられ、電気モーターはそのケースの台の部分に収められ、刻印 板読取機2つと出力機1つがガラスケースの外に設置されます。この読取機は解 析機関と電気的に接続されていれば充分なのですが、読取機にも電気モーター を用いることや、読取機も解析機関に無くてはならない物であるため、解析機 関の載っている台の上に一緒に設置されている場合がほとんどです。内部の記 憶容量としては、だいたい20個程度のlod しかありません。こちらにも小型リ レーを用いた機種があります。


## 社会への影響

解析機関は、さまざまな計算を(人間よりも)非常に高速に計算することが 可能なため、さまざまな工学的な分野は飛躍的な発展を遂げました。自動車や 蒸気機関車や電車の設計は言うに及ばず、飛行機や飛行船の設計、高層建築物 の設計等々がその恩恵にあずかっています。もっとも、帝都東京においては都 市計画がなかなか思うに任せず高層建築物はあまり多くは現れませんでしたが。 < 7>

安価な解析機関の出現によって、広告も変化しました。今や町角には、小 さな電球をいくつもいくつも格子状に並べたものを、解析機関で制御し、宣伝 文句が浮かび上がるような自動電飾広告板が氾濫しています。あるいは、色の ついた小さな板やブロックをモーターで回して文字や絵を表現するような自動 広告板も氾濫しています。

これらの解析機関がどのような使われ方をしているかですが、人々に一番 馴染みがあるのは、おそらく先に行ったような自動(電飾)広告板でしょう。そ の他の用途としては、大きな会社の経理に使われていたり、あるいは政府の会 計や統計処理に使われています。

ここで紹介した解析機関の中で特に有名なのは、International Analytical Ma- chines 社の解析機関です。これは英国王室科学協会の肝いり で作られた会社であり、現在では世界の標準機と呼ばれています。価格もそれ なりにしますが、信頼性が違うとのもっぱらの噂です。また、IAMの解析機関 をそのまま コピーしたような解析機関も他の会社から現れています。

現在、解析機関に関連する産業は非常に注目を集めており、一大産業とし て発展を続けています。


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