Vampire: the Masquerade

Publisher: White Wolf
デザイナー: Mark Rein Hagen
評価: A

WHITE WOLFが展開している、Gothic Punkシリーズの第1作です。 他のGothic Punkシリーズとの連携も可能です。 Gothicというのは「奇妙な」というような意味ですが、 例えば怪奇小説はGothic novelと呼ばれています。 で、このシリーズのどのような点がGothicなのかと言うと、 この世界にはVampireを始めとする、現実では存在しないとされているものが 存在しているからなのです。

さて、「Vampireが存在する世界」と言うと、「PCはVampire Hunterかぁ」と 思われるかもしれません。 ところがどっこい、「PCがVampire」なのです。 しかも、Vampireは人間らしい心、人間性を持ちつづけていなければならないのです。 つまり、Vampireとしての所業と人間性との葛藤、それによる苦悩こそがこのRPGの 醍醐味であり真髄でしょう。 もちろん、この苦悩を支援(強要?)するルールも存在し、PCは苦悩せざるを 得ないようになっています。 しかも、非人間的な行動をとれば人間性はどんどん失われてしまい、 最後にはPCはGMに取り上げられてしまうようなルールになっています。

背景世界は正直なところ詳細に設定されているとは言えないかもしれません。 これは、このGothic Punkという世界は"現実世界のメタファー"であり、 言うなればねじれた現実世界、Vampireやその他の超自然的な存在が 実在したらそうなったかもしれない世界だからなのです。 ですから、特に地理的な事柄などはほとんど設定されていませんし、 特に必要でもないでしょう。 もっとも、Vampireの社会や習慣、歴史、伝説についてはかなりしっかりと 設定されていますのでご安心を。 このVampireの社会などについての設定も、暗い雰囲気をかもし出しており、 非常に良くできていると思います。

システムは、技能+能力値個の10面ダイスを振って、目標値以上の目が1つでも 出れば成功というダイナミックなものです。 ただし、戦闘では何回もダイスを振らねばならず、ちょっと手間がかかって面倒です。 また、"苦悩"を支援する部分は強烈で、雰囲気を嫌がうえにも"苦悩"に導くでしょう (もっともRole Play次第ですが)。 そういうわけで、あまり「PCが"活躍する"」という雰囲気のRPGではありませんし、 "苦悩"を支援するルールによって、特にFantasy-RPGのような"活躍"は 不可能になっています。

また、ルールブックの表紙も、このVampireの世界を象徴するような 意味深なものです。 この表紙の意味が気にならない人、そしてかっこ良く苦悩できない人には正直な話、 遊んで欲しくないRPGです。

まぁとにかくやってみ。 ダークで良い。こっちも見てちょ。

SNEが翻訳するとかしないとかって噂が有るけど、 おれとしては SNE にはやってほしくないなぁ。 ShadowRun の雰囲気をぶちこわした リプレイを平気で出版するんだもん。 Vampire の世界もこわされちゃうんじゃないのかと不安で不安で。

評価 (1 Bad 〜5 : Good)
背景世界:5 : Vampire社会について詳しい
システム:4 : 簡略かつダイナミック
構成: 5 : 雰囲気を伝えるのがうまい
総合: 5 : 文句なし
サプリメント: 10個くらい(以上)あります。サプリメントを持たずとも、 充分に遊べますが、StoryTeller's Screenや、The Hunter's Hunted (PCがVampire Hunterになるサプリメント)あたりは持っていると便利かも。 StoryTeller's Guideはシナリオ作成のヒントなども載っています。