物語の発端というのは非常に重要なポイントです。 【物語のとっかかり】で述べた 「核」によって、大体どういう物語にしようかというイメージは できあがっていると思います。 しかし、いざ物語の発端 (というよりも背景・予兆か?)を考えようとすると、 誰もがふと立ち 止まってしまうのではないでしょうか。 ここでは、物語の発端 (というよりも背景・予兆か?)について、 そこで一体何が起こるのかを考えてみましょう。
物語の発端 (というよりも背景・予兆か? もう面倒だから、 一々これは書きません)は、大ざっぱに言えば
「どこかで誰かが何らかの問題に巻き込まれている」という状況になっています。 これをもう少し細かく見てみると (いやいや[プロップのファンクション]ヤ [ロダーリのカード]の 最初の部分を眺めてみると)、次の3 パターンになるようです。
なんとなく分かってもらえると思いますが、明確な禁止事項に違反した結果として 問題に巻き込まれるのか、 あるいは何かの欠如に気がつき、それを修復もしくは回復することを目的として 話が始まるのか、あるいはそれ以外の理由 に よって問題に巻き込まれるのか (だいたい誰かが何らかの 危機に陥っている、もしくは危機を予測しているということになるでしょう) という違いです。 これは、もっと詳しく分類するべきだとは思いますが、あまり考えていない もので...
では、それぞれの例としてどんなものが考えられるかも見てしまいましょう。
この例は、かなり大雑把なものなので、もっと多くのものも考えられるでしょう。 このあたりのことについては、後の [小林のイベント・リスト^^;]も見てください。 単純化および分類を行なっているつもりです。 あるいは、こちらは「なぜ、事件起こったのか?」の理由みたいなもので、 [小林のイベント・リスト^^;]のほうは 「そのために何が起こったのか?」について述べていると言ったほうが良いかも しれませんが。
というわけで、物語の発端についての話から始めましたが、 ここでは、シナリオ上のPCの目的はどういうものが有るのかについて 考えてみます。 [小林のプロット1^^;]で用いられている 「事件」や「行動の目的」の種類を考えてみると言っても良いかもしれません。
前節 【物語のパターン】では、 物語のパターンについて見て来ました。 しかし、物語のパターンでは、具体的にどのような事件が発生するのかに関する 考察は行っていません。 当然と言えば当然のことですが、物語のパターンは物語を抽象化した結果として 得られるものです。 ですから、具体的にどのような事件が起こるのかに関しては考慮する必要も 無く、また考慮できないのです (プロップの著書 [昔話の形態学] では、そこまで きっちり分析していますけどね。まぁ逆にそういう分析から [プロップのファンクション]を 得たわけでしょうけど)。
シナリオの型あるいは、行動の目的の型と言えば、 参考文献 [6つの世界の物語] には 「シナリオパターン作成チャート」というものが示されています。 まずは、 これから挙げておきましょう。
こんな感じで、事件が分類されており、それぞれに「真相」とかいろいろな 事柄の表が付けられています。
「シナリオパターン作成チャート」は、それはそれで 充分価値の有るものです。 しかし、例えば「誰が?」とか「真相」なんてのは いわば枝葉末節です(ってのは言いすぎか...)。 どんな事件が起こって(あるいは予想されて)、 それに対してPCの目的は何になるのかが決まりさえすれば、 あとは何とかなるものです。 そのための【物語のパターン】であり、 また【劇的な状況】なのです。
そこで、まず、私が個人的経験や [6つの世界の物語] などから得たものを、「何が起こって、PCの目的は何になる」という リストとして次に挙げます。
まずは、「何が起こるのか? (リストA)」です。
で、これに対して「PC達がどういう行動を取るか (リストB)」の 型を次に示します。
で、だいたい、リストAのどれに対しても リストBのどれもが組み合わせられると思います。 まぁ中には組み合わせが難しいのも有るでしょうけど。 ただまぁリストAの「脅迫 / 予告 / 密告」を使えば、組み合わせの自由度は かなり上がると思います。
で、それぞれの行為の対象となるのは、だいたい次のようになるでしょう。 これをとりあえずリストZと呼んでおきます。 とりあえずグルーピングして有りますが、まだそれほど充分に考えているわけでは ないので、あまり根拠なんかは挙げられません (いまいち文章にできないので...)。
で、リストAおよびリストBの対象は上のリストZのどれかになると思います (組合せによってはちょっと難しいものもあると思いますが)。 もちろん、リストAの対象と、リストBの対象は違う場合も有りますし、 同じ場合も有ります。 対象が異なる場合、リストBの対象は、リストAの行為を行なった者に なるのが主でしょう。 対象が同じ場合、リストAの対象を取り戻すか、 破壊するかということが、PCの目的としてリストBから選ばれることになるでしょう。
【物語のパターン】に挙げた いずれのパターンを用いるにせよ、「闘い」や「試練」や「事件」として、 これらに関連した何かが起こるわけです。 もちろん、「闘い」や「試練」や「事件」は、物語の後の方へ行くほどに核心的な 出来事が起こる方が良いでしょう。 逆に言えば、シナリオの早い時期で発生する事件は、 これから起こるイベントというかシナリオのクライマックスの方で 起こる事件の雰囲気を匂わすような、軽いものの方が良いと思います。
また 1つの物語の中ではこれらの型を1つしか使えないなどという 制限も有りません。 複数の 型を組み合わせることも十分に考えられます。
で、先に[小林のプロット2^^; ]の 場合だと2回繰り返すことが有ると言いましたが、 その場合、同じ事件を2回目ではより深刻なものにするという方法も有りますが (逆に言えば1回目の方では軽い事件を起こすということになりますが)、 あるいは別の事件を起こすという方法も有ります。
そう考えてくると、特にリストAとBは、単に事件の型というよりも、 これ自体も物語のパターンの一種と考えても良いかもしれません。
[小林のプロット2^^; ]の 場合だと2回繰り返すことが有ると言いました。 その場合、単純に2回の繰り返しでも良いんですが、 もうちょっと面白くする方法を考えると、 「実はだまされていた!」ってなのもあるわけです。
では、「リストA + リストB」を2つ以上つなげる時の 接続詞を上げてみますかね (仮にリストXとします)。
もちろん、もっと多くのものが考えられるでしょう。 これについては現在考察中であるため、分類や項目そのものに 問題が有るかもしれません。
ただし、これはシーンの接続ではなく、初期というか抽象度の高い時点での イベントの接続であることに 注意してください。 もちろんかなり重なる部分が有るとは思いますが。 例えばシーンの接続としては「そのころあっちでは」というような 接続も有りえるわけです。
で、こんな、一種の接続のしかたを考えてみたわけですが、 あるいはそもそも「リストA + リストB + リストA + リストB」と なるだけでなく、 「リストA + リストB + リストB」 というように、1回目のリストBの結果がそのまま新たな問題になって いる場合も考えられます。 この場合も、まぁ1回目のリストBと、2回目のリストの間の接続は、 上に挙げたようなものになるかとは思いますが。
ただし、物語が単純にリストAとリストBの連鎖からなっているわけでは ありません。 というのも、リストAとリストBはいわばシナリオの開始点と終点の イベントを挙げているだけであり、 その間に有るさまざまなイベントは考えていないからです。 そのようなイベントの型 (とりあえずリストCと呼んでおきます) については、 またいずれ考えてみたいと思います。 ただ、リストA と リストB にも重複するものが有ります。 また リストC としては、おそらく リストA + リストB に、 「交渉」 を加えて、 「殺害 / 破壊」に戦闘の意味も含めれば リストC になっちゃうかなぁなどとも思っていますが...
なんにせよ、このように、何が起こるか、そしてそれに対してPCが何をするの、 そしてその対象はそれぞれ何かを考えても、
[7 (A) * 8 (C)] * [8 (B) * 8 (C)] = 3,584もの組合せが有ります (それぞれ「その他」は除いています)。
これが仮に「リストA + リストB + リストB」の場合を考えると、
[7 (A) * 8 (Z)] * [8 (B) * 8 (Z)] * 5 (X) * [8 (B) * 8 (Z)] = 1,146,880もの組合せが有り、 「リストA + リストB + リストB」の場合を考えると、
[7 (A) * 8 (Z)] * [8 (B) * 8 (Z)] * 5 (X) * [7 (A) * 8 (Z)] * [8 (B) * 8 (Z)] = 64,225,280と、とんでもない数のバリエーションが考えられます (私自身もびっくり!)。 またリストAのほうで「脅迫」の内容を使えば、ここに挙げたものより数倍、 もしくは桁が違うくらい多くの 数が得られることになりますが。 もっとも、その全ての組合せが有効というわけではありませんけどね。
さらに、これに、シナリオの具体的な内容やら雰囲気やらを考え合わせれば、 もっと多くのバリエーションになるでしょう。 RPGという遊びの懐はこんなにも広いのですから、 いつもいつも悪者退治的な シナリオだけではなく、いろいろな傾向のシナリオを試してみましょう。