buff 参照のこと TiPOのほうにも入ってるかな?

#. 物語のとっかかり

物語というのは、まったくの無から、突然、全体が生まれることはありえません。 そう言えばモーツァルトは、突然、全スコアが思い浮んだという伝説が ありましたね。 そうすると、RPGのシナリオにせよ、小説その他何にせよ、 突然物語の全体が思い浮かぶという人や場合もありえないとは言いきれないの かもしれませんが...

ともかく、通常の場合であれば、 あらゆる物語にはなにかしらの核が有るはずなのです。 この章では、その核について考えてみたいと思います。 (この核がどこから得られるのかについては、ここでは触れません。 日常生活から得られることも有るでしょうし、 小説や映画や漫画などから得られることも有るでしょう。 ふと思いつくことも有るでしょうし、 一種のデータベースを構築し、その操作から得ることも有るでしょう。 これはいわば発想法の問題になりますが、ここで触れられるほど 私にはネタが無いもので...)

#.#. 物語の核

まず、物語の核になるものとしては、次の3つが考えられます。

  1. キー
  2. 状況
  3. テーマ
  4. モチーフ
  5. 深層テーマ

このリストは、見方によっては、 リストの上から下に向って、具体的なモノから抽象的なものに なっていると言えるかもしれません。

以下では、このそれぞれについてちょっと考えてみたいと思います。


#.#. キー

まず、キーとしてどのようなものが考えられるかを列挙してみましょう。

  1. 情景 / イベント
  2. 小道具
  3. 登場人物
  4. メッセージ (登場人物のセリフ等)

これらはキーをおおまかに分類したものであり、実際にはもっと具体的なもので なければなりません。 これらのキーと登場人物や場所などとの関りを考えて行くことで、 物語へと発展させて行くわけですが、 物語の中でこれらのキーと直接関連する部分はおそらくほんの一部分だけでしょう。 ですから、まず「キーと直接関連する部分」を考え、 他の部分は、「キーと直接関連する部分」との流れを考えながら 創り上げて行くという感じになると思います。

また、このリストからも分かるとおり、キーは実質的な具体物 (およびその周辺) と言えるでしょう。

まず情景 / イベントですが、これはおそらくクライマックスの情景や そのイベントであることが多いのではないかと思います。 とは言え、 【シナリオ作成の手順、手法】の [2連鎖モデル(因果イベント列)] (【本論の前に】の [2連鎖モデル(因果イベント列)]も 見てください) で述べている 初期2連鎖モデルのいずれかのイベントが、ここで言っている イベントに当たるわけではありません。 初期2連鎖モデルだとあまりにも大雑把すぎて、具体的な情景やイベントまでは なかなか思い描いていないと思いますから。

もちろんクライマックス以外の情景やイベントから入ることも有ることは確かで、 その場合は、物語の発端部分か、あるいはクライマックスというほどでは ないが、何らかの山場であることが多いと思います。

で、この情景 / イベントというキーを中心に、 そこまで物語が進展するためにはどのような イベントなどが必要であるか、 あるいは逆にその情景 / イベントから状況がどのように進展するのかを 考えシナリオを作成していくことになると思います。 このあたりのことについては 【シナリオ作成の手順、手法】のほうをご覧ください。

次に小道具と登場人物ですが、 これは「その小道具 / 登場人物を巡っての事件」がシナリオになる場合でしょう。 その事件は、大体において、「その小道具 / 登場人物の (特殊) 能力が引き起こす、 もしくはその (特殊) 能力によって解決される 事件」になると思います。 ここで、「(特殊) 能力」と言いましたが、かならずしも いわゆる超能力などの (特殊) 能力だけでなく、 例えば「ある小道具に何らかの秘密が隠されている」とか、 「ある登場人物が何らかの秘密を知っている」などのことがらも 「(特殊) 能力」に含めて考えて下さい。

この、小道具と登場人物にどういう事件が起きるのかは、 【シナリオの中心となる事件】の [小林のイベント・リスト] を眺めていただくのがよろしいかと思います。

次にメッセージですが、これはもしかしたら情景/イベント、あるいは小道具や 登場人物やに含めて考えても良いのかもしれません。 早い話、登場人物のセリフであるとか碑文など、いわゆるカッコイイセリフ というようなものを考えています。


#.#. 状況

状況というのは、何について書くか、 あるいは主人公などが置かれている状況という ようなものだと言えるでしょう。

まだ考えがうまくまとまっていないのですが、 【ストーリーの種】 であるとか、 参考文献 [シナリオハンドブック] などに見られる、 ジョルジュ・ポンティ (ポルティという記述も有り、私にはどちらが正しいのか 分かりません) という人がまとめた [ドラマティックなシチュエーション 36の分類]と いうものが状況として使えるかもしれません。

ともかく状況は、例えば小説や漫画、そしてもちろん神話から 得ることもできます。 というか、そういう話を良く聞きますね。 とは言うものの【ストーリーの種】を 見ていただくのも良いかもしれません。 ただ、そちらで言っている種よりもうちょっと具体的というか、 ちょっと軸がずれているんですが、参考にはなると思います。 そうそう、ストーリーの種の案が何か有りましたら、ぜひお教えください。


#.#. モチーフ

上のリストでは、先にテーマが書いてありましたが、 話の順番を考えるとモチーフを持ってきたほうが良いような 気がするので、先にモチーフについて書きます。

モチーフというのは 参考文献 [シナリオハンドブック] を参考にすると、 どうも「何について書きたいのか」、および「なぜ書きたいのか」いうような動機と 言えるようです。

モチーフは深層テーマよりも具体的にシナリオの内容に関係します。 ただし、キーほど強く関係するかというとちょっと分かりません。 ある意味ではキーよりも強く関係します。 物語は (テーマと) モチーフに沿って展開しますから。 とは言え、キーのように直接物語中に現われる何かであるというわけでも ないのですから。視点の問題と言えるでしょう。

このモチーフというのはかなり具体的なものですので、 これと言って分類することはできません。 いや、どこかで誰かがやっていて、 私がまだ知らないだけかもしれませんが。

ところで、これが 参考文献 [新版 スペースオペラの書き方] だと、「...ピンクのビルがきっかけとなり、つまり、それが "ネンネの実家はお人形屋さンで、そこを舞台に..." という「モチーフ」に なって...」 と書かれています。 まぁこれも「何を書きたいか」とか「なぜ書きたいのか」というものと 考えられないことも無いのですが、なんかちょっと違うような気もします。


#.#. テーマ

さて、テーマです。

モチーフというのは「何を書きたいのか」、あるいは「なぜ書きたいのか」という 動機のことでした。 それに対しテーマというのは「どのように書きたいか?」という ことだと言えるでしょう。 あるいは視点の設定と言っても良いかもしれません。

さらに別の見方をすれば、 モチーフとテーマというのは物語を作る際の動機と物語の方向性とも 言えるでしょう。

ところで、これが 参考文献 [新版 スペースオペラの書き方] だと、「しかし、もともと私は "ある悪意を抱く他星系人が人形に化けたアンドロイドを潜入させることによって 星涯星系侵略を計る" という「テーマ」の話をいずれ書くつもりで...」 と書かれています。 まぁこれも「何を書きたいか」とか「なぜ書きたいのか」というものと 考えられないことも無いのですが、 どちらかと言うとむしろ状況と言うのが良いような気がします。

さらに、 参考文献 [演劇入門] においては、 やはりテーマは「著者の言いたいこと」というような意味で使われているようです。 確かに「言いたいこと」が有るから「視点」が定まるという理解も可能ですが、 ちょっと "?" が残ります。

このモチーフとテーマというのは、どうも読む本ごとに 違った説明がされているような気がします。 これは結局のところ私の理解が不十分ということも有るのでしょうが、 それに加えてこの言葉を使う人ごとに意味の違いが有るという こともあるのではないかと思うのです。

さらに言うと「プロット」と「ストーリー」というのも 使う人ごとに意味が違うような言葉のようですが... まぁそれはここには関係無いので...


#.#. 深層テーマ

深層テーマとは、その物語全体の根底に流れるBGM のような ものであり、いわばその物語を通して訴えるメッセージのようなものを考えています。 別の言いかたをするなら、そのシナリオやセッションを通してGMがプレイヤーに 伝えたい事柄の核心と言えば良いでしょうか。

かなり大雑把かつ大仰に、ありがちなものをリストアップしてみましょう。

  1. 愛や友情
  2. 妬みや嫉妬
  3. 信念、信仰
  4. 狂気
  5. 陰謀
  6. 裏切り
  7. 伝説やうわさ
  8. 探索

まぁ、これはわざと大袈裟なものを挙げてみましたが、 深層テーマはなにもこんな大袈裟なものだけではありません。 それに、こんなに抽象的な物ではなく、より具体的な物を考えなければならないとは 思いますが。

考えかたによっては、深層テーマによってテーマにおける視点が定まるとか、 あるいは逆と言えるかもしれません。

また、ここで挙げたものを考えてみると、 参考文献 [シナリオハンドブック] に挙げてある ジョルジュ・ポンティ (ポルティという記述も有り、私にはどちらが正しいのか 分かりません) という人がまとめた [ドラマティックなシチュエーション 36の分類]と いうものが、 かなりここで挙げた深層テーマに近いというか、 重なるものがあるように思えます。 ただ、[ドラマティックなシチュエーション 36の分類]は、その名前のとおりドラマティックなシチュエーションの 分類ですから、深層テーマを考える場合、それを参考にすることはできても、 それに制限されるわけではないことは言うまでもありません。 やっぱりシチュエーションは、状況ですよね。

さて、上に挙げた深層テーマの例は、大仰なものを大雑把に分類したものであり、 実際にはより具体的なものとしなければなりません。 これらの深層テーマはキーとは異なり、シナリオと直接関連すると いうことはあまり多くないと思います。 つまり、これらの深層テーマは、シナリオ上に現われるイベントを 通して深層テーマを表現する具体的な事件が発生するわけです。 しかし、そのイベントが直接「愛や友情」などという深層テーマを 直接表現するわけではありませんよね。 そのイベントは、「愛や友情」などという深層テーマにふさわしい内容を 表現するに留まるはずです。 深層テーマとは、何回も言いますが、むしろ物語全体を通して流れるBGM の 主題とでもいうようなもの、 物語を通して訴えるメッセージのようなものでしょう。

そうそう、深層テーマとして上に挙げたものはかなりありがちで かつ大袈裟なものばかりでした。 しかし、おそらく「私は世界をこのように見ている」というような ものであっても良いのではないかと思います。 うまく説明できないんですが...


#.#. まとめ

ちょっと例を考えてみましょう。 たとえば、「愛」という深層テーマを、 「イルカと人間との交流」というモチーフで描くというような感じです。 で、「イルカと人間との交流」と言ってもいろいろあるわけですね。 ホエール・ウォッチング (えと、イルカの場合もホエールに括っちゃって 良いんでしょうか?) から見るのか、 差し網 (いや、定置網だっけ?) で犠牲になるイルカがいるというような と視点から見るのか、 あるいはイルカ保護に乗り出している水族館の職員の活動から みるのかというような視点の設定で物語は全然違ってきますね。 そういう視点の設定あたりがテーマとなるわけですね。 ここで、状況としても、 主人公とイルカが対立しているのか、 主人公と誰か人間が対立しているのか などなどいろいろ考えられるわけです。 また、キーとして、イルカと一緒に泳ぐ主人公というようなシーンが 考えられたりするわけです。

そうそう、この例では先のリストの逆順に挙げてありますが、 そういう順番で考えるべきだというわけではありません。 むしろリストに挙げてあるような順番か、 あるいは上に挙げた説明の順番で決まることが多いかもしれません。

というわけで、物語の核として、キーと状況とテーマとモチーフと深層テーマ というものを考えてみました。 簡単に考えると、物語の核としてはこれらの1つのみで充分だと思えるかも しれません。 もちろん、物語創作の一番最初の段階だと、まぁどれか1つのみから始まることに なるのではないかとは思います。 しかし、例えばキーのみを核として物語を創るのは考えものです。

キーがおもしろいものであれば、確かにシナリオもおもしろいものになる かもしれません。 しかし、いかにおもしろいキーを核としていても、それだけで物語としての 奥行きが得られるかどうかは疑問です。 表面的には、面白いものにできる可能性は有ります。 しかし、その物語を通して訴えるものが有るかどうかとか、 プレイヤーの共感を得られるかを考えると、 キーだけを核としたのではちょっと難しいかもしれません。

また同様に、深層テーマのみを核として物語を創るのも考えものです。 何か言いたいことがあったとしても、 プレイヤーが物語を理解するための手掛かりのようなものが設定されるかどうか、 あるいは印象に残るような物語に出来るかどうがが疑問です。 つまり、深層テーマだけが先行し、いわば具体物の無い物語になってしまうのでは ないかと思うのです。

ではモチーフだけではどうかというと、これもやはり難しいと思います。 まず何より、テーマとモチーフというのは不可分の関係に有ります。 モチーフは決まっても、それをどういう流れで表現するのかが駄目であれば、 物語としてはいまいちのものと言わざるをえないでしょう。 またモチーフは決っていても、具体的な手がかり、つまりはキーが無ければ、 キー無しでテーマのみを核とした場合と同様になってしまうと思うのです。

つまり、物語の核としてのキーと状況とテーマとモチーフ、そして深層テーマは どれが欠けても良い物語を構築するのは難しいのではないかと思うのです。

さて、物語の核であるキーと状況とテーマとモチーフと深層テーマを 何とか得たとして (どうやってそれらを得るのかということこそが問題なのですが、 こればっかいは「頑張って」としか言えませんから...^^;)、 そこからどうやって物語に成長させて行くのでしょうか? これまた難しい問題です。 ただ、核と後に説明する【物語のパターン】を互いに 照らし合わせながら物語を創り出して行くという方法で、 そこそこの物語を創れるのではないかと思うのです。 この問題については【シナリオ作成の手順、手法】で、 考えてみたいと思います。

さて、ここではテーマ、モチーフと分けた考えましたが、 テーマ、モチーフ、そして 【本論の前に】や 【シナリオ作成の手順、手法】で述べている 2連鎖モデル、特に初期2連鎖モデルまでを含めてテーマ (あるいはモチーフ、 プロット、ストーリー)と呼ぶ場合も有るようです。 ともかく、どうもこのあたりは用語がはっきりしていないのか、 私の理解や調査がたりないのか...

いずれにせよ、核が決まったら、 それを具体的な物語に作り挙げる作業が待っています。 そして、この作業を助けるものの1つとして、次に挙げる 【物語のパターン】が 有ります。


私家版 Advanced!!】 【物語の作りかたを考える
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